8月15日、大阪で髪を染めてもらいながら、「どこに行く〜?」そんなノリで行き先を決めた。京丹後の夕日ヶ浦、神戸、名古屋…と候補はいくつかあったけれど、数日前にふと提案した「福岡」に決めて、新幹線に飛び乗った。遠くへ行けば行くほど、旅気分は高まる。
この気軽さと身軽な感覚でどこへだって行けるようになりたい。
一日目の夜は、突然の誘いに付き合ってくれた友人のお陰で、日付が変わるまでよく飲み、よく笑い、とても濃いものになった。
翌朝、うどんを食べに行くことにして、開店時間まで近くの喫茶店でGoole Mapを見つめながら次の目的探し。どんどん溜まっていくGoogle Mapのリストのメモ機能に、誰に聞いたか、何で見たか、そんな手がかりを残しているのがとても役に立つ。
指でなぞった先。
「志賀海神社_君が代」とあった。
ここから1時間。海もある。
即決だった。
ピンときたら、パッと動く。日頃からそんな自分でいたいと思っている。”思い”から”行動”までの時間が早ければ早いほど、幸福感が得られる。ラッキーなことやハッピーなことも奇跡みたいに起こりやすい。
うどんやさんでは先に並ばれていた千葉からのご夫婦とおしゃべり。うどんと言ったらコシでしょ、福岡でもコシの強いうどんを求めてしまう。
うどん処 松島
小麦粉と塩水だけで作る無添加・防腐剤不使用の純手打ちうどん。とっても美味しかった。

お互いに「よい旅を」と言ってうどんやさんを後にした。
志賀島までは天神から乗り換えなしで行けるバスが1時間に1本しかなく、行きはフェリーで行くことに。博多ふ頭を目指しタクシーに乗った。運転手さんが無料で上れるポートタワーが東京タワーと同じ設計者で眺めがいいことや船の切符を買っているところにまで来てくれて、福岡の情報が載ったパンフレットを渡してくれた。生粋の博多弁とその優しさに泣きそうになる。
ポートタワーに登ると目に止まった屋根が三角でドキッとした。私にとって三角形は「いい時間になるだろうな」という確信的サイン。

乗船時間10分前にどしゃ降りの雨。

傘も持たず目の前に絶望的な景色が広がっていたのに、不思議と不安な気持ちにはならず、浄化の雨が降ってくれていると思った。乗船して半分が過ぎたところで、雲が綺麗な境界線を作って行く先の空は晴れていた。

まずは神社へ。
「海の神様の総本社」「龍の都」と称えられている志賀海神社。伊邪那岐命(いざなぎのみこと)の禊祓(みそぎはらえ)によってご出生された綿津見三神(仲津綿津見神 / なかつわたつみのかみ・底津綿津見神 / そこつわたつみのかみ・表津綿津見神 / うはつわたつみのかみ)を奉祭している。志賀海神社に古くから伝わる神楽歌は国家「君が代」のルーツと知り、行ってみたいと思っていた場所。(今でも春と秋の山誉め祭で歌われている)
フェリーを降りてすぐの鳥居をくぐり、参道を歩いているあいだは人通りもなく、貸切のような気配。2つ目の鳥居の下にある御潮井(砂)を左、右、左と軽くふり清める。

階段を登ると5,6人の団体の方が先にお参りをされていた。どこからやってきたの?と思うくらい突然でびっくりした。そして、通り過ぎようとした時、
「高天原爾 神留坐須 たかあまのはらに かむつまります
神漏岐 神漏美乃 命以知氐 かむろき かむろみの みこともちて
皇親神伊邪那岐乃大神 すめみおやかむいさなきのおほかみ…」
と天津祝詞(禊祓詞)を唱え出して鳥肌が立った。
境内に入ると雷がゴロゴロ。雷はもともと「神鳴り」が語源で、雷神様・龍神様によってもたらされていると言われている、そしてここは龍の都…!先ほどの団体の方が正式参拝を申し込まれて、太鼓の音まで聞こえてきた。雷に太鼓。これはもう間違いなく神様からの歓迎のサイン。大工さんたちもやってきていつのまにか賑やかな雰囲気になった。

それから海へ。

ここ数ヶ月、海を見たいと思っていた。それが地元、九州の海で叶ったことがうれしい。その辺にあった木にお酒を並べて、小1時間ほど過ごした。帽子も日傘も持ってない上に日焼け止めもしていなかったけれど、曇り空に時折吹く風と目の前の穏やかな海。海の神様からの贈りもののようなひとときだった。

帰りはバスで天神まで。あと10分ほどで到着という頃に雨が降ってきて、バス停に着いたタイミングでぴたりと止んだ。帰りの新幹線では新大阪に着く手前でまた大雨と思ったら発車する時に近くで雷が落ちた。京都に着いたら地面が雨で濡れていたけど、私たちは家に帰るまでの丸一日雨に濡れずに済んだ。
何もかもが最高に絶妙なタイミングで、完璧な夏の旅になった。