通りすがりの古本屋さんでアラーキーの写真集が目に止まった。パラパラとページをめくると、アラーキーが撮った東京の街の写真について、妻の陽子さんとの会話が書かれていた。
私も最近似たようなことをしていたので、びっくりして、即買いしてしまった。
どこだかわからなくてもいいわけよ。東京のどっかが出るだろう、それでいいわけ。
アラーキーの言葉にそうあった。もともと、「はい、観光地です」みたいな場所よりも、住宅街や大通りから一本入った細い道が好きだったけれど、この言葉を読んで、なんでもない道を歩くことが以前よりずいぶん楽しくなった。その後で、私たちはそれぞれが撮った写真を見せ合う。同じ場所を歩いているのに、目に止まる場所や切り取り方が違うことに学びや発見があって、時々はちゃんと同じものを撮っていることに嬉しくもなる。
実は、写真てーのは写すことより写したものを見せて話すほーが楽しいのだ。
あとがきにあったアラーキーの言葉がすーっと響く2020年春。

日々の些細なことにちゃんと目を向けていたい。月が綺麗だとか、餃子が美味しく焼けたとか、やさしい言葉や、目の前の人の笑顔を大切にしたい。
「何があってもだいじょうぶ」と言い聞かせながら、どんな自分でどんな世界を生きたいのか想像したい天秤座満月。想像は自由で、案外簡単に叶ったりする。